私達理学療法士は、骨や筋肉・関節などを操作する職種です。その中で、各組織を的確に動かすためには、どのような組織がどこにあるのか、どのように動いているのかをイメージし、その組織を確実に触れる「触診」という技術が求められます。
実際、問題となっている組織が直視できるものではなく、皮膚で覆われているために正確な解剖学的知識と、そこに存在する治療ターゲットとなる組織を触診しなければなりません。例えば、関節の動きが制限されている場合、どの筋肉が関節の動きを制限しているのか、どの組織の動きが悪いのかなどを確認する際に触診を行います。
触診技術は非常に難しく、理学療法を行う上で最も重要な技術と言えるのではないかと考えます。我々理学療法士はこの触診技術の精度を更に高めるため、日々努力しています。
リハビリテーション科 小野正博
本日、東大阪市の近鉄花園ラグビー場で第93回全国高等学校ラグビーフットボール大会二回戦が開催され、グラウンドドクターとして参加致しました。今日は比較的穏やかな天気でしたが、それでも長時間外にいますと生駒おろしの寒風が身に凍みます。今日の二回戦は本大会期間中で、最も試合数の多い日です。会場の熱気は寒空を忘れさせるくらいのもので、第1,第2、第3グラウンドをフルに使って熱戦が繰り広げられました。この熱気を、ラグビーをあまり知らない多くの方々にも感じていただければいいのに、と思わずにはおれませんでした。
高校生たちの熱いプレーを見ていると、今でも花園出場を目指して練習に励んでいた高校時代を思い出します。まあ、ウン十年も前の話ですが…。この素晴らしい大会は多くの大会役員の方たち、教員の方たち、医師たちなど多くのボランティアに支えられて運営されています。私もこの大会にほんの少しでも貢献できれば、と思っています。
ラグビーでは試合経過の中で、途中まで接戦になっていても片方に流れが傾くと一気に点差が拡がってしまうことがあります。結果として思わぬ大差という試合がよくあります。ディフェンスの緊張の糸が途切れてしまうのでしょうか?団体競技ならでは、なのでしょうか?その中で、第1グラウンドで行われた東京第二地区代表東京高校と奈良県代表天理高校の試合は最後まで緊張感を保った好ゲームでした。序盤は東京高校が展開力で先制しましたが、天理高校がFWのモール攻撃で取り返してと接戦を繰り広げ、最後は天理高校が押しきりましたがとても見応えのある試合でした。今後の天理高校の健闘が楽しみです。
第3グラウンドでグラウンドドクターをしていたときに、ふと後ろを振り返るとそこに林敏之氏が立っておられました。林敏之氏はかつて日本代表選手として長年活躍され、世界選抜にも選出された日本を代表する世界的選手で伝説の名ロックです。数年前に同志社大学ラグビー部の夏合宿に行かせて頂いたときに林敏之氏が来られており色々とお話しを伺ったことがありまして、大変久しぶりでしたがご挨拶をさせて頂きました。
その時に林敏之氏から戴いた、林敏之氏のインタビューが掲載されている雑誌記事のコピーに載っていた林敏之氏現役当時の写真です。カッコいいですね。
先日、名賀医師会臨床懇話会が開催され出席しました。特別講演は「骨粗鬆症に関する最近の話題」で講師は三重大学大学院医学系研究科臨床医学系講座運動器外科・腫瘍集学治療学教授須藤啓広先生でした。以前にも数度、須藤先生の骨粗鬆症に関する講演を聴かせて頂きましたが、いつも明快でわかりやすく大変勉強になります。
2012年に原発性骨粗鬆症の診断基準が変更になりました。骨折種にかかわらず既存骨折の存在による新規骨折の相対リスクは約2倍だそうです。一方、椎体骨折や大腿骨近位部骨折が存在する場合の新規骨折の相対リスクはそれを遙かに上回るということで、既存骨折のうち椎体骨折や大腿骨近位部骨折が存在する場合には骨密度と関係なく骨粗鬆症と診断され、その他の骨折の場合は骨密度が80%未満の例が骨粗鬆症と診断されることになりました。その他にも少し変更点があるようです。
椎体骨折の診断は通常レントゲン検査で行いますが、仰臥位での撮影では見逃してしまうことも多いようです。仰臥位と座位と双方でレントゲン検査をすることによって、診断精度が向上し見落としが減少したということです。これは参考になりますね。
超高齢化社会の日本では、現在骨粗鬆症の方は1280万人ともいわれています。また生活習慣病と骨折リスクの関連性が指摘されており、糖尿病、慢性腎臓病、閉塞性肺疾患、高血圧症、脳卒中、虚血性心疾患などでは骨折リスクが上昇すると言われています。椎体骨折があると、大腿骨近位部骨折の発生率が3倍になり生存率の低下にも繋がります。既存椎体骨折は骨折のドミノ現象を起こすと言えます。
各国における大腿骨近位部骨折の発生率は近年減少に転じているのだそうですが、日本だけが発生率が上昇し続けているというデータを紹介して頂きました。これはショッキングなデータですね!日本では骨粗鬆症の方1280万人のうち治療を受けておられる方は380万人、約30%だそうです。更に骨粗鬆症骨折の入院治療を受けて退院後も骨粗鬆症治療を継続しておられる方は19.6%に過ぎないそうです。
理想的には骨折を起こす前に骨粗鬆症治療を始めて、骨折受傷自体を防ぐことができればいいのですが、現実問題としてはなかなか困難です。骨折のドミノ現象を防ぐために、「STOP AT ONE」が提唱されています。つまり一度骨折を起こしてしまった場合、骨粗鬆症治療を行い二度目の骨折、骨折の連鎖を断ち切るということです。このように骨粗鬆症患者を確実に骨粗鬆症治療に繋げるために、骨粗鬆症マネージャー(リエゾンサービス)という取り組みがなされているそうです。リエゾンとは連絡係と訳され、診療におけるコーディネーターの役割を意味します。イギリス、オーストラリア、カナダではこの様なサービスが実施され、多職種連携による骨折抑制を推進するコーディネーターの活動により骨折発生率が低下し、トータルでは医療費の抑制にも繋がっているそうです。
これはとても重要な取り組みですね。骨粗鬆症はSilent diseaseとも言われています。超高齢化社会を迎える日本にこそ必要な制度ですね!