先日開催された伊賀地区学校保健研修会の講演(2)は「小児がんのトータルケア」で講師は三重大学大学院医学系研究科小児科学分野教授平山雅浩先生でした。平山雅浩先生は三重大学小児科における小児がんの診療とトータルケアについて解説して下さいました。 平山雅浩先生によりますと、小児がんの特徴は、比較的稀である、死亡原因の上位である、白血病が最多、約70%長期生存するようになってきた、半年から1年という長期の入院治療を要する、治療に副作用が生じる、晩期合併症がある、学業に支障をきたすことがある、などだそうです。日本では年間約2000人の子どもが小児がんと診断されているそうで、造血器がんでは白血病が最多で、悪性リンパ腫など、固形がんでは脳腫瘍、リンパ腫、神経芽腫、骨腫瘍、軟部腫瘍、肝腫瘍、腎腫瘍、網膜芽細胞腫などが挙げられるそうです。 代表的な疾患である急性リンパ性白血病では、1960年代には生存率が約11%であったのが、2000年代には生存率が約90%に向上しており、薬物療法の進歩によるものであるということでした。小児がんの長期生存率はおしなべて75%くらいにも向上しているそうです。 平山雅浩先生によりますと、これまでの小児がんの治療の課題は、患児の身体的、精神的、経済的負担、そして学業、発達面の問題などであるそうです。そこで更なる、小児がんに対するトータルケアが必要であるということで、三重大学小児科における小児がんトータルケアについて紹介して下さいました。 小児がんの患児が学業での支障をきたし不登校になったりするということで、院内教室と復学支援に取り組んでいるということでした。三重大学小児科にはチャイルドライフスペシャリスト(CLS)という医療環境にある子どもや家族に心理社会的支援を提供する高度な知識を持った専門職がいるそうです。院内学級は小学校、中学校だけで、高校にはないということで、平山雅浩先生によりますと遠隔教育や単位の互換制度などの制度の充実が今後に期待されるということでした。病名告知とチーム医療にも取り組んでおり、病名告知は「真実の説明」が重要でありチャイルドライフスペシャリストの役割が大きいということでした。晩期合併症はあらゆる臓器に起こるということで、長期フォローアップ外来を行っているということでした。緩和ケアと在宅医療にも取り組んでおり、在宅医療の割合は近年とても向上しているということでした。兄弟支援も重要であるということでした。親が患児に係りきりになることで、患児の兄弟は親が不在の状態となり親に甘えられず我慢を強いられて問題が生じるということでした。兄弟の日イベントなどを催して、兄弟支援にも取り組んでいるということでした。 三重大学小児科は50年以上にわたって、小児血液腫瘍の診療・研究を活動の中心に置いているそうです。平成25年2月に三重大学病院は全国15施設の「小児がん拠点病院」に指定されたそうです。三重大学小児科は全国規模の小児白血病治療研究の診断センター、小児がん経験者の長期フォローアップ拠点施設および日本骨髄バンク移植認定施設としての役割を果たしているそうです。 平山雅浩先生は先進的できめ細やかな数々の取り組みなどを、大変わかりやすく解説して下さいました。本当にありがとうございました。 |