先日、第9回 Nabari Clinical Jamが開催されました。特別講演は”「せんせい、このブツブツなんやろか?」と問われたときに。”で講師は皮ふ科 野内クリニック院長野内伸浩先生でした。本会は若手の先生方が参加される教育的な講演会ですので、今回経験豊かな皮膚科の先生のご講演は実践的な内容であったので、出席者にとって実りの多い講演会でした。 皮膚に湿疹などのブツブツをきたすような原因は様々であり、野内伸浩先生によりますと「かぶれ」、「アトピー性皮膚炎」、「にきび」、「あせも」、「水虫」、「手荒れ」、「じんま疹」、「虫さされ」などが挙げられるそうです。今回、野内伸浩先生は「虫さされ」によるブツブツに焦点を当てて、解説して下さいました。「虫さされ」によるブツブツの原因となる虫には「ノミ」、「ブユ」、「ダニ」、「毛虫」、「蚊」、「トコジラミ」、「蜂」、「疥癬」などが挙げられるそうです。野内伸浩先生によりますと、皮疹の性状から原因となった虫の種類は推測できるということでした。 吸血性節足動物(蚊、ブユ、ノミ、トコジラミ)や刺咬性節足動物(蜂、クモ、ムカデ)などは、生体が抗原として認識し即時型または遅延型のアレルギー性炎症反応を生じ、接触性節足動物(ドクガ、イラガ、ハネカクシ)などは刺激性炎症反応であるそうです。 「ノミ刺され」の特徴は、足関節、下腿を中心とした低い部位に水疱を作ることであるそうです。猫ノミがほとんどで、野良猫と接触したり、公園の芝生、庭での草むしりなどで刺されることが多いようです。 「蚊刺され」の特徴は、成人では即時型反応と遅延型反応が両方起こるのに対して、乳幼児、小児では即時型反応があまり出ず、遅延型反応が強く出ることだそうです。乳幼児の手に蚊刺されにより著しく発赤、腫脹している写真を見せていただきました。腫れたのが蚊に刺されてから時間が経ってからで、腫れ方も激しいので原因がわかりにくいでしょうね。老年になると遅延型反応は起こらなくなり、超老年になると即時型反応と遅延型反応ともに乏しくなるということでした。「蚊刺され」でも年齢によって反応の仕方が全然違うのに驚きました。 「ブユ」は2~5mmの小さなハエみたいな虫で、露出部が刺されることが多いそうです。刺されて半日くらいで痒みを伴う紅斑を生じ、強い痒みが続くそうです。2週間から場合によっては数年続くこともあるそうです。 「イエダニ」はネズミが媒介し、時にトリが媒介するそうです。腋窩部や大腿内側、側腹部など着衣に覆われている柔らかい部分を選んで吸血する特徴があるようです。 「トコジラミ」は約5mmの大きさですので、肉眼で見えるそうです。露出部位に紅色丘疹を生じ、咬み直しをするので咬み口が数個並ぶそうです。全世界中で発生中だそうで、旅行鞄に潜んでホテルなどでも発生することもあるそうです。 「マダニ」が媒介する疾病はライム病、日本紅斑熱、ツツガムシ病、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、など数多くあります。マダニに咬まれると皮膚に固着し、除去することが困難です。小さい幼虫ならワセリンを塗るという方法もあるそうです。野内伸浩先生はマダニを除去するための、有用な道具を紹介してくださいました。 「蜂」、「ムカデ」の毒はヒスタミン、セロトニンなど共通成分が多いということで、アナフィラキシー様反応の原因となるそうです。翌日に腫脹が増悪するためクーリング、患肢挙上を行い、抗ヒスタミン剤、ステロイド剤を使用する場合もあるということでした。 「毛虫皮膚炎」は茶毒蛾の幼虫によるそうです。茶毒蛾の幼虫は5~6月、8~9月と年2回発生し、幼虫には30~50万本の毒針毛があるそうです。この毒針毛は目に見えないほど細いそうで、毛虫の体の目に見える毛とは違うそうです。風に飛ばされてくるので集簇している湿疹と散在性の湿疹が混在しており、非常に痒いそうです。約70%の患者は、毛虫の存在に覚えがないそうです。完治するまでに2週間程度かかる傾向があり、幼虫の発生時期には注意を要するということでした。 野内伸浩先生は、その他に悪性黒色腫(メラノーマ)などについても解説して下さいました。とてもわかりやすく勉強になる、実践的な講演会でした。 野内伸浩先生は三重県皮膚科専門医会会長も勤めておられるそうです。三重県皮膚科専門医会は皮膚科診療をとおして社会に貢献できることを目指しておられるそうで、一般の方々を対象にした「皮膚に関する講演会」を毎年開催しておられるそうです。 |