2018 年 8 月 のアーカイブ

リハビリ通信 No.267 高齢者骨折と小児骨折について

2018年08月12日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

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高齢者の骨折は骨強度の低下による脆弱性の骨折が多く、それらに加え筋力低下、バランス低下が要因となり転倒して骨折に至ります。よく見られる骨折部位は大腿骨頚部骨折 上腕骨近位端骨折、橈骨遠位端骨折、椎体圧迫骨折です。高齢者の骨は硬く、骨折はガラスが割れる様にわずかな力を加え一部が破損すれば、ポキンと骨が破損し骨折します。

逆に小児は骨に弾力があり、骨膜が厚く柔らかい為、ポキンと折れることはなく竹を折る様に連続性を保ちながら骨折に至ります。小児骨折で多い骨折部位は前腕・肘関節周囲です。上肢だけで約半数以上が見られ、続いて鎖骨骨折、下腿骨折です。小児骨折の場合、高齢者よりも骨癒合が早く完治期間も短いと言われていますが、骨端線の骨折での成長障害、骨幹部での骨折による過成長障害により後遺症を誘発しない様に注意が必要です。

リハビリテーション室長 見田忠幸

待ち時間のお知らせ(8月6日~8月10日)

2018年08月11日(土) 待ち時間のお知らせ1新着情報

8月6日~8月10日

夏期休業のお知らせ

2018年08月09日(木) クリニックインフォメーション1新着情報

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当クリニックでは下記の期間を夏期休業とさせていただきますので、ご案内いたします。休業期間は何かとご迷惑をおかけすることと存じますが、ご容赦くださいますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

夏期休業期間 平成30年8月11日(土)~平成30年8月15日(水)

 

伊賀地区学校保健研修会

2018年08月06日(月) 院長ブログ

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先日、伊賀地区学校保健研修会が開催されました。講演(1)は「生活習慣・学力と睡眠教育」で講師は明治薬科大学リベラルアーツ心理学准教授駒田陽子先生でした。

駒田陽子先生はまず、生活習慣と学力について解説して下さいました。生活習慣でも特に睡眠習慣について説明して下さいました。平日が忙しく睡眠不足に陥り、週末にまとまって多く睡眠時間をとる(ドカ寝)という人も多いと思います。駒田陽子先生によりますと平日と休日の睡眠中央値(睡眠している時間の真ん中の時間)が大事であるそうで、週末に睡眠中央値が大きくずれるということは時差にあうようなものなので、社会的ジェットラグ(Social Jet Lag)とも言うそうです。またわずかな睡眠不足が、まるで借金のようにじわじわ積み重なる「睡眠負債」は命に関わる病気のリスクを高め、日々の生活の質を下げていることが明らかになったことが昨年のNHKスペシャルで放映されたそうです。駒田陽子先生もこの番組に出演しておられたそうですが、「睡眠負債」という言葉は2017年流行語大賞でもベストテン入りし一躍有名になったそうです。

駒田陽子先生によりますと思春期に向けて夜型が進むそうで、夜型になるにつれ社会的ジェットラグが大きくなるそうです。文部科学省の調査によりますと、小中高校生の就寝時間は現状では小学生が22時、中学生が23時、高校生が0時に就床しているそうです。文部科学省の調査では就寝が遅いと「自分のことが好き」と答える割合が低く自己肯定感が下がり、成績がよい生徒ほど十分な睡眠をとっており、寝る時間が遅くなるほど成績が振るわないという睡眠と学業成績の関係性も認められたそうです。海外の報告では就寝時間が早く、平日と休日のずれが小さく、睡眠時間を8時間程度確保しているほど学力が高いということでした。アメリカでの研究によりますと、年齢別の必要睡眠時間は小学生で9~11時間、中高生は8~10時間の睡眠が必要であるということでした。都内の区立中学生徒の睡眠習慣の調査では、平日は必要な睡眠時間を確保できていないという結果であったそうです。駒田陽子先生によりますと眠気に関連する要因として、睡眠時間が短い、夜型、不規則であるほど眠気が強いという結果であり、学業成績に関連する要因の調査では自宅学習時間が短い、ディスプレイ使用時間が長い、睡眠が不規則であるほど学業成績が悪いという結果であったそうです。

学習意欲の科学的研究に関するプロジェクトで、スマホ使用時間・勉強時間と数学の点数の調査では2時間以上勉強して、スマホが1時間より少ない子が最も成績が良く、次いで勉強は30分もしないけどスマホをしない子供、最も点数が悪いのは2時間以上勉強するけどスマホも4時間以上使っている子で、勉強していない子よりも点数が低くなることは衝撃的でした。また調査によりますとスマホのアプリではLineが特に成績に響くということでした。駒田陽子先生によりますと平日と休日の睡眠時間帯のずれ(=休日の朝寝坊)は日中の眠気や学業低下に繋がるという不規則な生活による悪影響があるいうことでした。文部科学省の朝食摂取状況と学業成績の調査では朝食を欠食している生徒は成績が悪いという結果であったそうです。以上のことより駒田陽子先生によりますと良好な学業成績の土台となる生活習慣とは規則正しい就寝、起床、食事(=休日も朝寝坊しない、目安は1~2時間以内)で平日に睡眠時間を確保できていること(目安は中高生が8時間以上、小学生が9時間以上)、平日の就寝時刻が早い(=朝食をきちんととれる)ことだそうです。自宅での学習時間と学力は正の相関であるそうで、ゲーム、スマホなどの時間を制限することが重要であるそうです。

駒田陽子先生は次に眠りの役割について解説して下さいました。睡眠中に記憶が整理され、固定されるそうです。昼間の学習・課題で使われた脳部位が、夜の睡眠中に、より深く眠るそうです。また眠らないと海馬の活動が低下するそうです。睡眠時間を十分に取っている子どもは、睡眠時間が短い子どもに比べ、海馬の体積が大きいそうです。睡眠不足になると記憶が悪くなり、楽しい記憶の方がより低下し、嫌な記憶はあまり低下しないそうです。夜の時間帯や睡眠中に体の中では様々なホルモンが分泌され、明るい環境や睡眠をとらない条件ではホルモンがきちんと分泌されないそうです。深いノンレム睡眠時に、成長ホルモンが大量に分泌されるそうです。睡眠習慣と肥満の調査では、3歳時点での睡眠習慣(短い睡眠時間)が中学1年時の肥満に繋がるそうです。アメリカのParental set bedtimeと青年期の抑うつの調査では、就寝時刻が遅いと抑うつや自殺念慮のリスクが上昇し、家庭での約束・声かけ(何時までには寝よう)が大切であるということでした。睡眠時間とADHDの調査では睡眠が足りていない状態では、落ち着きがなくなってくるということでした。以上のことより駒田陽子先生によりますと「眠りの役割」は、睡眠は、ただ単に休息している状態では無く睡眠中に身体・脳・心のメンテナンスが行われており、昼間に体験したこと・覚えたことは睡眠中に整理され、記憶が固定されるそうです。睡眠中に様々なホルモンが分泌され、睡眠が不足したり、不規則な生活をしていると、ホルモン分泌がうまく行われないということでした。睡眠は気分を安定させ、強い心を作るということでした。

次に駒田陽子先生は小中高校生の眠りの特徴について解説して下さいました。一夜の睡眠経過ではレム睡眠とノンレム睡眠を周期的に繰り返しており、レム睡眠では急速眼球運動が起こり夢を見ており、ノンレム睡眠は睡眠段階1~4(値が大きいほど睡眠が深い)で子どもは深い睡眠が多いということでした。駒田陽子先生によりますと眠りのメカニズムは疲れたら眠るという「恒常性機構」、夜になると休むという「体内時計」、必要なときには目覚めるという「覚醒機構」が関わっているそうです。疲れたら眠るという「恒常性機構」では起きている時間が長くなると、疲れ(睡眠物質)が脳に蓄積され睡眠に繋がるということです。従って放課後の仮眠は不適切であるということです。「体内時計」では体内には約24時間の時計が備わっており、人間は夜に寝て昼間に活動するようにできているが、毎日微調整(時計合わせ)をする必要があるそうです。朝の光によって体内時計をリセットしており、夜の光は後ろにずれがちな体内時計をより後退させるそうです。光と体内時計の関係性は、朝の光は体内時計をリセットし(リズムを前進させる)、夜の光は体内時計を夜型化し(リズムを遅らせる)、昼間の光は体内時計にメリハリをつけ、青色を多く含む光は体内時計に強く作用し(昼間は〇、夜は×)、子どもは大人に比べて光に敏感であるそうです。世界的に見ても夜間には特に先進国では光に満ちあふれているということでした。人間は昼行性で、通常は昼に活動的で夜に休息、睡眠を取る動物ですが、そのタイミングは一人一人少しずつ異なっており、この一人一人が持つ時間的なタイミングの傾向を朝型・夜型指向(クロノタイプ)と言うそうです。思春期に向けて体内時計は夜型化するということでした。不登校12万人のかげで~広がる子どもの睡眠障害~というタイトルで2015年1月8日放送のNHKクローズアップ現代で不登校と睡眠障害の関係性が取り上げられました。平成26年度の文部科学省の調査では不登校のきっかけでは第1位が友人との関係52.9%、第2位生活リズムの乱れ34.2%、第3位勉強がわからない31.2%、第4位先生との関係26.2%、第5位クラブや部活動の友人・先輩との関係22.8%、第6位入学、転校、進級して学校や学級になじめなかった17.0%、第7位インターネットやメール、ゲームなどの影響というように、不登校のきっかけの2位が生活リズムの乱れであり、PC、スマホ、ゲームの影響も大きいことは特筆すべきことであるということでした。休み始めた学年・時期は中学1~2年生で長期休暇中に生活が不規則にならないような呼びかけなど、長期休み明けの対応が大切であるということでした。子どもの眠気の調査では思春期前期より思春期後期の方が眠気は強い傾向があり、第二次性徴あたりで昼間の眠気が強くなってくるそうです。

駒田陽子先生は生徒への睡眠教育をどう勧めていくかということについて解説して下さいました。睡眠習慣のチェックとして、睡眠日誌、振り返りなどにより生徒に自分の睡眠を把握させることが重要であるということでした。毎日の睡眠時間が少ない短眠型には推奨睡眠時間を参考にして睡眠時間を確保する、不規則型には就寝・起床時間をできるだけ一定にする、帰宅後仮眠型には放課後に仮眠をしない、やるべきことを効率よく終わらせ、夜は早めに寝るように指導する、休日補填型には土日も平日と同じ時間に起きる(2時間以上ずらさない)そのためにも週末夜ふかししないように指導することなどが重要であるということでした。

以上のことより駒田陽子先生は気をつけるべき生活習慣として、生活習慣を整えて体内時計のリズムを保つ、朝は日光を浴び、朝食をとる、仮眠・昼寝をしない、適度な運動を習慣づける、お風呂は早めに入る、夜食は控え遅い時間の食事は2回に分けるなどの工夫をする、眠りに入りやすくなる習慣を整える、布団の中でデジタル機器(スマホ、ゲームなど)は使わない、早寝早起きによって必要な睡眠時間を確保する、平日と土日の睡眠リズムをずらさない、などであるそうです。十分な睡眠時間を確保するためにどうしたらよいか考えてみて、一日の時間の使い方を見直すことや生活習慣チェックリストにより取り組めそうなことを自分で決めてよい睡眠がとれるよう生活習慣を整えることが大事であるということでした。

駒田陽子先生はまとめとして、良い生活習慣は学力の土台であり、子どもの成長には眠りが欠かせない、成長にともない睡眠、体内時計は変化する、現在の眠りの状態を把握させ、適切な睡眠をとるために何を工夫すればよいか、生活に取り入れられるかを考えさせる、くりかえし睡眠教育をすることで、子どもたちの体力・気力・学力が向上するということでした。

最後に駒田陽子先生は「眠りは素晴らしい人生の扉」をいう言葉を示されました。これは本当に重要なメッセージであると駒田陽子先生の講演を聴いて確信いたしました。

骨粗鬆症とともに Vol.20 注射、点滴によるビスホスホネート製剤

2018年08月05日(日) 新着情報1骨粗鬆症

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骨粗鬆症の薬による治療は、骨折の有無、骨密度の値、骨折の危険性などを総合的に考慮して開始されます。骨粗鬆症の薬には色々な種類があります。薬の作用から、骨が壊れるのを防ぐ骨吸収抑制薬と骨をつくるのを促す骨形成促進薬、骨に重要な栄養素を補給して治療する薬などの種類があります。

骨が壊れるのを防ぐ骨吸収抑制薬のひとつであるビスホスホネート製剤は骨粗鬆症治療薬の基本になる薬とも言えます。それまでは骨に重要な栄養素を補給して治療する薬、ビタミンD製剤などが治療の主流でしたが、1996年にビスホスホネート製剤が発売開始となってから、骨密度の上昇から骨折抑制効果がさらに証明されたと言われています。その後今日までも開発が進み、内服薬のほか注射や点滴製剤もあります。ビスホスホネート内服製剤では消化管からの吸収率が低いため、水以外の飲食物は服用後30分以上経たないと摂取できません。また確実に胃内に到達させるために、服用後30分は横になってはいけないという制限があります。しかし注射や点滴では血管内にダイレクトに投与されるため、そのような制限もなく、血中移行が100%達成できるというメリットも大きいです。週1回、月1回では薬をのみ忘れてしまうという方にも確実に治療できる方法かもしれません。

骨粗鬆症の薬物治療の目的は骨粗鬆症性の骨折を予防し、骨折による日常生活動作の低下を予防し、生活の質の低下を防ぐことです。しかし骨粗鬆症の薬物治療では5年以内に52.1%が脱落してしまうというデータがありあます。患者様のライフスタイルやお好みに合わせた薬、投与方法を選んでいただき、確実に治療を継続してもらえるように準備、支援させていただいています。

骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考文献

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版、ライフサイエンス出版、2015