2015 年 11 月 のアーカイブ

待ち時間のお知らせ (11月16日~11月21日)

2015年11月21日(土) 待ち時間のお知らせ1新着情報

11月16日~11月21日

「関節リウマチ治療の実践」

2015年11月19日(木) 院長ブログ

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先日、みえ整形外科イブニングセミナーが開催されました。講演1は「関節リウマチ治療の実践」で講師は三重大学整形外科講師若林弘樹先生でした。若林弘樹先生はサンフランシスコでリウマチに関する国際学会発表を終え、帰国後すぐというお忙しい中でご講演下さいました。

関節リウマチにおける関節炎の主病変は滑膜炎であり、滑膜の増殖から次第に周囲の軟骨、骨が侵され、関節の破壊と変形に至ります。従来、関節破壊が10年以上経過してから進行するのではと思われていたのが、実は発病後2年以内に急速に進行することが明らかとなり、関節リウマチに対する治療方針が以前とは大きく変わってきたという経緯があります。若林弘樹先生はEULAR recommendationなどに基づいた関節リウマチに対する治療アルゴリズムのフェーズⅠからフェーズⅢまでの流れを解説して下さいました。フェーズⅠではMTXを使用できるときと使用できずに他のDMARDを使用する場合に分けて、6ヶ月以内に治療目標達成を目指し、フェーズIIでは予後不良因子の有無により生物学的製剤の追加または他のDMARD使用の選択となり、フェーズⅢでは他の生物学的製剤への変更かトファシチニブへの変更の選択となります。若林弘樹先生はアンカードラッグとなるMTXの歴史を紹介して下さいました。MTXは1964年に乾癬に対する低容量パルス療法が行われ、1972年に関節リウマチに対して低容量パルス療法が初めに行われました。欧米で関節リウマチに対する治療薬として承認されたのが1989年で、日本では1999年に関節リウマチに対する治療薬として承認され、日本で16mg/週投与が認められたのが2011年です。通常はMTX投与を6mg/週で開始し4~8週間で効果不十分なら8mg/週に増量します。更に4~8週間で効果不十分なら16mg/週に増量します。予後不良因子があれば8mg/週で開始し、副作用因子があれば2~4mg/週で開始します。

若林弘樹先生はMTXの副作用についても解説して下さいました。容量依存性の副作用として消化器症状、肝機能障害、骨髄抑制などがあります。容量依存性の副作用の場合には葉酸投与が有効である場合が多いです。一方、容量非依存性の副作用として呼吸器症状、皮疹などがあります。呼吸器症状の中でも特に間質性肺炎は重篤となり注意を要します。検査としては血液検査(KL-6)ですが、早期発見には聴診所見が有効ということです。これは血圧計のマンシェットを外すときのバリバリという音であるベロクロラ音が特徴的であるそうです。副作用の感染症は容量依存性に増えるそうです。MTXは高い有効率、骨破壊抑制、生活機能改善という点で関節リウマチに対する第一選択であり、アンカードラッグという位置づけです。その次に使われることの多いDMARDであるブシラミン、サラゾスルファピリジンについても若林弘樹先生は解説して下さいました。副作用についてはブシラミン23.9%、サラゾスルファピリジン23.1%と共に高率ですね。更には、どちらとも無顆粒球症などの重篤な副作用もあるということです。またブシラミンは皮膚障害、蛋白尿など、サラゾスルファピリジンは肝機能障害、呼吸器症状などの副作用も多いということです。

若林弘樹先生は症例を呈示しながら関節リウマチ患者さまの治療の実際を紹介して下さいました。MTXを初めDMARDや生物学的製剤においても副作用出現率も高率で重篤な副作用も多く、細心の注意を要します。内科医との連携は必須であるように思われます。

リハビリ通信 No.175 腱板損傷に対する整形外科検査について

2015年11月15日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

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腱板損傷すると肩関節の自動拳上が困難になります。腱板損傷に対する整形外科検査にはdrop arm sign、painful arc sign、empty can test、full can testなどがあります。

・drop arm sign:被験者は座位になり、検査者が被験者の手首を持ち、肩関節90°以上外転位から手を離してゆっくりと下降させる。または、90°外転位で保持させる。腱板が損傷しているとスムーズに下降または、保持できなくなります。

・painful arc sign:肩関節の自動運動において腱板損傷していると拳上角度60~120°で疼痛が生じます。

・empty can test:前腕回内位、肩関節内旋位で外転位を保持させて、抵抗を加えます。

・full can test:前腕回外位、肩関節外旋位で外転位を保持させて、抵抗を加えます。

empty can test、full can testともに肩関節を外転位で保持させることで腱板筋の収縮を促すため、腱板筋に損傷があると収縮時痛が生じます。整形外科検査以外にもレントゲンや夜間痛の有無の確認などの評価を行っています。

リハビリテーション科 服部 司

待ち時間のお知らせ (11月9日~11月14日)

2015年11月14日(土) 待ち時間のお知らせ1新着情報

11月9日~11月14日

「プライマリケアの場で出会う精神疾患」

2015年11月13日(金) 院長ブログ

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先日、伊賀・名賀合同臨床集談会が開催され、出席しました。講演は「プライマリケアの場で出会う精神疾患」で、講師は上野病院院長平尾文雄先生でした。

平尾文雄先生はプライマリケアの場で出会う代表的な精神疾患としてうつ病、うつ状態、パニック障害、不眠症、アルコール依存症について、紹介して下さいました。

平尾文雄先生は全米依存症調査で、精神衛生上の問題に直面する米国成人の割合は1年で25%にものぼるが、そのうち60%が何の治療も受けていないこと、かかりつけ医を訪れるケースの66%がストレス関連の症状に関係していることなどを紹介して下さいました。抑うつを呈する患者の初診科は内科が64%と圧倒的に多く、最初から精神科、心療内科を受診するのは1割に過ぎないそうです。

うつ病の基本となる症状は「憂うつな気分が2週間以上続く。」「何をやっても楽しくない。」の2項目で両方揃えば90%以上うつ病と言えるそうです。確かに誰しも憂うつな気分になりますが、2週間以上とはなかなか続かないですね。身体症状としては頭痛、肩こり、倦怠感、発汗、胃の痛み、下痢・便秘、息苦しさなどであるそうです。成る程、これならまず内科受診をするのも頷けますね。うつ病の経過は前駆期から極期を経て回復期に至るそうですが、直線上に改善するのではなく、波状の経過をたどり改善していくそうです。回復期のちょっとした落ち込みの際に自殺企図が生じることも多いそうです。典型的には数ヶ月の経過で回復し7割が1年以内に回復するそうです。一時期、うつ病は「心の風邪」というキャンペーンがあったそうですが、2,3割の方が慢性化することなどからこのキャンペーンは必ずしも正しくないと平尾文雄先生は指摘しておられました。従来型のうつ病が壮年期に多くメランコリー親和型性格(几帳面、責任感が強い、協調的)、他者配慮的で自罰的傾向、規範的社会に親和性、「周囲に迷惑をかける」と考えがちなのに対して、新しいタイプのうつ病は若年層に多い、自己中心的で他罰的傾向、規範的社会に不適応(会社などでも)、「自分が迷惑をかけられている」と考えがちとかなり違いがあるようです。平尾文雄先生は「生きるのがしんどい」や自殺を口にする患者への対応にも言及されました。

またパニック障害は突然何のきっかけもなくパニック発作が起こり、多くは1時間程度で落ち着くそうです。パニック発作は突然の動悸、めまい、息苦しさ、振戦、嘔気、「死ぬのではないか」という激しい不安などだそうです。多くの患者は最初の発作時に、救急車で一般病院を受診しているそうです。いつパニックがくるかという不安にとらわれ、電車・飛行機に乗れない、人混みに行けない、長い橋を渡れない、理容店に行けないなどの生活上の困難が生じることも多いそうです。

不眠症に関しては入眠障害、中途覚醒、熟眠障害、早朝覚醒などいろいろな不眠のパターンに対して、適切な睡眠薬を用いることが重要であるそうです。不眠症の治療の前に睡眠障害対処の方法として、睡眠時間が人それぞれなので日中の眠気で困らなければ十分と考えること、眠たくなってから床につく、就寝時間にこだわりすぎないこと、同じ時刻に毎日起床すること、眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きすること、睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもとと認識することなどを挙げておられました。どれも成る程ですね!

アルコール依存症は酒に対して精神・身体依存が生じやすい体質を持つ人が陥る慢性疾患であり、意思の問題ではないそうです。酒がおいしくて飲んでいるのではなく、酒が切れると不快になる(離脱症状)から飲まずにおれないということです。このことは私は全く知りませんでした。アルコール依存症者の平均死亡年齢は52歳(私の年齢です!)で、放置すれば50歳代で死亡するそうです。節酒(量を減らす)を勧めても無理で、断酒して健康を取り戻すか、飲み続けて早死にするかの二者択一になるそうです。

新たに知ることが多く、色々と勉強になる講演会でした。